車のエンジンは、規則正しく燃焼が行われることで、違和感なく走行することが可能になります。
しかし、点火/吸気/排気の1つでもタイミングが狂えば、上手く燃焼が行われず、エンジンは止まってしまいます。
このタイミングを規則正しく調整しているのが「タイミングベルト」と呼ばれる部品です。
今回は、タイミングベルトの交換時期や交換費用について、相場とともに徹底解説していきます。
タイミングベルトとは?
タイミングベルトは、エンジンを動かすためには欠かせない部品で、規則正しく動作させる(吸気/排気/燃焼)ための、タイミングを調整しています。
タイミングベルトは、エンジン内部に取り付けられていますが、耐熱性・耐久性の高いゴム樹脂製(水素添加ニトリルゴム)のため、簡単には切れません。
ただし、タイミングベルトが切れると、バルブとピストンが衝突して、エンジンが完全に壊れしまいます。
少しでも切れるリスクを防ぐために、最近の車には金属製の「タイミングチェーン」を採用しています。
タイミングベルトとタイミングチェーンの違いを説明していきますね。
項目 | タイミングベルト | タイミングチェーン |
---|---|---|
素材 | ゴム樹脂製 | 金属 |
修理/交換 | 必要 | 不要(調整) |
耐久性 | △ | 〇 |
静粛性 | 〇 | △ |
部品代 | 安い | 高い |
タイミングチェーンは金属製のため、切れる可能性が低く、交換する必要もありません。
ただし、金属チェーンは、ゴム樹脂製のタイミングベルトに比べて、静粛性では大きく劣ります。
タイミングチェーンはエンジンオイルの潤滑を必要としているため、油脂管理を怠ってしまうと、異音や故障の原因に繋がります。
タイミングチェーンの方が優れているように思えますが、低燃費志向が強まっている最近の自動車業界では、フリクションロス(摩擦損失)が少ないタイミングベルトの使用が見直されています。
タイミングベルトの交換時期
タイミングベルトは、ゴム樹脂製でできているため、経年劣化や使用状況によって劣化していきます。
そのため、ある一定の走行距離や年月によって、メーカーから交換時期が定められています。
タイミングベルトは、下記の時期を目安に交換して下さい。
- 走行距離・100,000km毎
- 新規登録から10年毎
上記の交換時期は、あくまでも目安で、軽自動車は走行距離・50,000km~70,000km毎の交換が推奨されています。
タイミングベルトは突然切れることが多く、切れるときの前兆はほとんどありません。
タイミングベルトを交換しないで乗り続けると、タイミングベルトが空回りしたり、ベルト自体が切れてしまいます。
タイミングベルトが切れると、クランクシャフトとカムシャフトの回転がずれて、最悪の場合はエンジンが完全に壊れてしまいます。
万が一、走行中にタイミングベルトが切れた場合は、大事故に繋がることがあるので、走行距離・80,000kmまたは新規登録から9年目までに、交換することをおすすめします。
少し早めに交換することで、タイミングベルトが切れることを簡単に防げます。
タイミングベルトの交換方法
タイミングベルトは、素人が簡単に修理できる部品ではありません。
ただし、不可能かと言われたら答えは「NO!」。
タイミングベルトの交換方法(手順)を解説していきます。
- 冷却水とエンジンオイルを抜く。
- タイミングベルトカバーを外す前に、周辺の補器類を外していきます。
- ファンベルトのオートテンショナーを緩める。
- ファンベルトを外す。
- ファンベルトのオートテンショナーを取り外す。
- アイドラプーリーを取り外す。
- ウォーターポンププーリーを取り外す。
- クランクプーリーを緩める。
- ベルトテンショナーを固定しているステーを取り外す。
- タイミングベルトカバーを取り外す。
- クランク角センサーとプレートを取り外す。
- クランクプーリーを回して、タイミングベルトの位置合わせを行う。
- クランクプーリー/オイルポンプ/カムシャフトの歯車を丸いポッチに全て合わせる。
- タイミングベルトのテンショナーを緩める。
- タイミングベルトに印を付けて取り外す。
- クランクシャフト/オイルポンプ/カムシャフトのオイルシールを交換する。
- テンショナーを取り外す。
- オイルポンプのハウジングを取り外す。
- オイルポンプのゴムパッキンを交換する。
- ウォーターポンプを取り外す。
- 各ゴムパッキンやシールを取り付ける。
- オイルポンプのギヤを印に合わせて組み付ける。
- オイルポンプのハウジングを取り付ける。
- ウォーターポンプを取り付ける。
- カムシャフト/クランクシャフト/オイルポンプのプーリーを取り付ける。
- テンショナーを取り付ける。
- 古いタイミングベルトを参考にして、新しいタイミングベルトに印を付ける。
- 回転方向と印を合わせてタイミングベルトを取り付ける。
- テンショナーを緩めて、タイミングベルトを張る。
- クランクプーリーを回して、タイミングベルトの位置合わせを行う。
- クランクプーリー/オイルポンプ/カムシャフトの歯車を丸いポッチに全て合わせる。
- クランク角センサーとプレートを取り付ける。
- タイミングベルトカバーを取り付ける。
- ベルトテンショナーを固定しているステーを取り付ける。
- アイドラプーリーとファンベルトのオートテンショナーを取り付ける。
- ファンベルトを取り付ける。
- エンジンオイルと冷却水を入れる。
- 完了。
タイミングベルトの交換作業は、工程が非常に多く、素人には難易度が高い作業です。
事前に用意する部品や工具もたくさんあるため、整備マニュアルを参考に作業を進めるようにして下さい。
タイミングベルトカバーを外すときに、エンジンマウントが邪魔する車種もあります。
また、タイミングベルトを外さないと交換できない部品も多々あるので、このタイミングで交換することをおすすめします。
タイミングベルトと同時交換が推奨されているのは、下記の部品です。
- Vベルト
- テンショナー
- アイドラプーリー
- カムシャフトのオイルシール
- クランクシャフトのオイルシール
- オイルポンプのオイルポンプ
- ウォーターポンプ
Vベルト以外は、タイミングベルトを外さなければ、修理ができない部品ばかりです。
タイミングベルトを交換するタイミングに交換しておけば、後々のトラブルを1回の工賃で回避することができます。
それほど高額な部品ではないので、タイミングベルトと同時交換することを強くおすすめします。
もし、自分で修理する勇気がある人は、タイミングベルトの交換にチャレンジしてみては如何ですか?
もちろん!全て自己責任でお願いします(汗)
タイミングベルトの交換費用の相場
タイミングベルトの交換は、通常のVベルトよりも難易度が高く複雑です。
そのため、整備工場に依頼した場合は、交換費用の約1/3を作業工賃として請求されます。
インプレッサGRFのタイミングベルト交換費用を、ディーラーとカーショップの相見積もりで比較してみました。
項目 | ディーラー | カーショップ |
---|---|---|
タイミングベルト脱着・交換 | 28,710円 | 38,500円 |
タイミングベルト | 16,280円 | 16,280円 |
アジャスタAssy | 16,940円 | – |
アイドラベルト① | 9,240円 | 9,240円 |
アイドラベルト② | 5,104円 | 5,104円 |
アイドラベルト③ | 2,904円 | 2,904円 |
ベルトセット | 6,820円 | 6,820円 |
シーリング テンショナー① | – | 451円 |
シーリング テンショナー② | – | 132円 |
カムシャフトボルト | – | 1,188円 |
Oリング① | – | 616円 |
Oリング② | – | 770円 |
カムシャフトオイルシール脱着・交換 | – | 6,600円 |
カムシャフトオイルシール | – | 2,728円 |
オイルポンプオイルシール脱着・交換 | 4,950円 | 5,500円 |
オイルポンプAssy | 14,410円 | – |
オイルポンプオイルシール | 418円 | 418円 |
クランクシャフトオイルシール脱着・交換 | – | 1,100円 |
シリンダブロックOリング | 154円 | 154円 |
ウォーターポンプ脱着・交換 | 7,920円 | 3,300円 |
ウォーターポンプ | 13,970円 | 13,970円 |
ホース① | 495円 | 495円 |
ホース② | 539円 | 539円 |
ホースクランプ① | 176円 | 176円 |
ホースクランプ② | 154円 | 154円 |
ウォーターポンプ ガスケット | 220円 | 220円 |
ウォーターポンプ シーリング | 143円 | 143円 |
サーモ ガスケットAssy | 2,376円 | – |
フロントベルトカバーNo.1 | – | 759円 |
フロントベルトカバーNo.2 | – | 671円 |
ラジエターインレットホース | – | 2,013円 |
ラジエターアウトレットホース | – | 1,793円 |
ラジエターホース クリップ | – | 1,188円 |
クーラント交換 | 6,930円 | – |
純正クーラント | 8,580円 | – |
クーラント(高性能) | – | 14,960円 |
クールサーモ(高性能) | – | 7,480円 |
作業工賃計 | 48,510円 | 55,000円 |
部品計 | 98,923円 | 91,366円 |
交換費用合計 | 147,433円 | 146,366円 |
- みんカラ:https://minkara.carview.co.jp/userid/1985845/car/1493165/5581855/1/note.aspx#title
ディーラーとカーショップとでは、交換する部品に多少の違いこそありますが、概ね相違ない見積内容と言えます。
カーショップでは、高価な社外品のクーラントやクールサーモを使用しても、ディーラーよりも安く交換修理ができます。
やはり、純正部品のみを修理に使用するディーラーよりは、高性能な社外部品が多用できるカーショップや整備工場の方が、同じ交換費用を出すならお得かもしれません。
タイミングベルトの交換費用の相場は、タイミングベルトだけなら「100,000円ほど」、ウォーターポンプ交換など、万全を期すなら「150,000円ほど」です。
車種によって、部品代や作業工賃が大きく異なるため、今回の交換費用相場は参考程度に捉えて下さい。
タイミングベルトが切れたときの対処法
タイミングベルトが切れるときは、「異音がする」などと言う人がいますが、筆者の経験上では、前兆や予兆は全くありません。
筆者も2度ほどタイミングベルトが切れたことがありますが、2回とも前兆なく突然切れました。
どちらも、前兆や予兆はなかったですし、エンジンオイルやクーラントも3,000km毎に交換していたので、整備上で問題があった訳でもありません。
万が一、タイミングベルトが切れた場合は、下記の対処法を速やかに実行して下さい。
- ハザードランプを点灯(発煙筒を焚く)させて、追突事故を防止する。
- 速やかにJAFやロードサービスに連絡をする。
タイミングベルトが切れた場合、エンジンスターターを回しても、エンジンが再始動することはありません。
速やかにハザードランプを点灯させて、追突事故を防ぐなど、後続車両に故障車として認識してもらうことが最優先です。
JAFやロードサービスが到着するまでは、車外で待つのではなく、必ず車内で待機するようにして下さい。
タイミングベルトが切れた場合は、車の移動ができないため、安全を最優先で行動しましょう。
まとめ
タイミングベルトの交換費用や、交換時期について解説してきましたが、タイミングベルトが切れてしまうと、どうすることもできなくなります。
タイミングベルトを交換するには、10万円以上の交換費用が掛かりますが、10年に1度の修理と思えば、それほど高い修理代ではありません。
それよりも、交換しないでそのまま乗り続ける方が、取り返しのつかない大事故を起こす可能性が高まります。
エンジンオイル交換やクーラント交換などの定期メンテナンスを怠らず、荒々しい運転を控えることで、タイミングベルトの寿命を延ばすことは可能!
タイミングベルトの交換を考えている人は、先延ばしにしても切れるリスクが高まるだけですから、1日も早く交換することをおすすめします!