どんなに車の運転が上手な人でも、車を擦った経験が一度はあるはずです。傷の大小に関わらず、修理しないでそのまま放置するのは絶対にNG!
今回の記事では、車を擦ったときの直し方や修理代について徹底解説していきます。また、保険を使って修理するときの適用条件なども、詳しく説明するので最後まで読んで下さいね。
車を擦ってしまったらどうする?
車を擦ってついた傷は、どうしていますか?ちょっとした傷なら、そのまま放置している人も多いのではないでしょうか?
傷がついたまま放置してしまうと、見た目が悪くなるのは勿論ですが、車にとって悪い影響しかありません。例え目立たない傷であっても、塗装面のクリアが剥げたことで、錆の発生を引き起こす原因になります。
また、傷がついたことで、車の価値も下がってしまうため、高値で売ることも難しくなります。このように車を擦った場合は、速やかに傷を修理しなければ、デメリットしかありません。
車を擦ったときの直し方
車を擦ったときの直し方には、「自分で修理する」と「プロに任せる」の2通りがあります。傷の度合いによって、修理方法を選べば良いのですが、自分で修理するには最低限の知識と技量が必要になります。
ここでは、車を擦ったときの直し方について解説していきます。
自分で修理する場合
板金が必要な大きな傷でなければ、自分で修理することは可能です。傷を直すための材料や道具は、カー用品店で全て揃えることができます。
ここでは、自分で修理する場合の準備物や修理手順を紹介します。
準備する材料や道具
車を擦った傷を修理するには、下記の道具や材料が必要です。100均で買える材料もあるので、修理に取り掛かる前に下記の材料を用意して下さい。
- ビニール手袋
- 耐水ペーパー(#1500/#2000/#3000)
- シリコンオフスプレー
- タッチアップ塗料
- コンパウンド(極細目)
- 布(マイクロファイバー)
- スポンジ(食器洗い用で可)
- 水(水道水で可)
小さな傷や擦り傷なら、タッチアップペイントで簡単に修理することができます。軍手などの布製手袋は、塗装や水が浸み込んでしまうので、使い捨てのビニール手袋などを使用して下さい。
耐水ペーパーは、小さい数字が「粗目」で、数字が大きければ「細目」。タッチアップ塗料を削るだけなら、目が細かい#1500以上の耐水ペーパーをおすすめします。
シリコンオフスプレーとは、傷や塗装面に付着している油分を除去する「脱脂スプレー」のことです。塗装面には油分がついているので、脱脂をしなければ上手く塗装ができません。
そのため、塗装修理においては、シリコンオフスプレーが必須材料とも言われています。
コンパウンドは、最終的な仕上げ(傷隠し)に使用します。コンパウンドは、最終的な仕上げに使用するため、「細目」または「極細目」を用意して下さい。
誤って粗目のコンパウンドを使用してしまうと、塗装が傷だらけになってしまい、修理不能になることがあります。
上記の材料は、あくまでも小さな傷を修理するための材料ですから、範囲の広い傷や凹みが大きな傷の修理には向いていません。
自分で修理する場合の作業手順
自分で修理するために必要な道具を揃えたら、いよいよ作業に取り掛かっていきます。ここでは、タッチアップ塗料を使った修理の作業手順について解説していきます。
- 傷の個所を水洗いする。(ホコリや汚れを落とす)
- 良く乾かしてから塗装個所をシリコンオフスプレーで脱脂する。
- 傷をタッチアップペイントで盛るように塗る。
- 塗料をしっかり乾燥させる。
- 水を掛けながら盛った塗料を耐水ペーパーで平らになるまで削る。
- 耐水ペーパーで傷ついた個所をコンパウンドで傷が目立たなくなるまで擦る。
- 作業完了
タッチアップペイントを塗るときは、傷に対して塗り込むのではなく、傷に塗料を載せていく(盛る)感じで凸状態にするのがポイント!
耐水ペーパーで塗料の山を削っていき、最終的には平らに近い状態にすること。
その時、耐水ペーパーは「#1500→#2000→#3000」の順番で掛けるのですが、#1500でつけた傷を#2000で消し、#2000でついた傷を#3000で全ての傷を消すイメージで作業して下さい。
もし、耐水ペーパーを掛けているときに、塗料の山が飛んでしまった場合は、もう一度「3」からやり直して下さい。
耐水ペーパーを力任せに掛けてしまうと、タッチアップ以外の塗装まで削ってしまうことがあります。タッチアップ塗料の山だけを削るため、時間を掛けて慎重に作業を行って下さい。
#3000でついた傷は、コンパウンドで綺麗に消えますから、安心してペーパー掛けをして下さい。
プロに任せる場合
擦った個所が多い場合や、大きな凹みがある場合は、自分で修理をしても修理跡が必ず残ります。また、無謀な修理をした場合は、失敗する可能性も高くなり、取り返しがつかなくなるかもしれません。
タッチアップでは修理不可能と判断した場合には、無謀なDIYは避けてプロに任せることをおすすめします。
ここでは、プロに修理してもらう方法について紹介します。
自動車販売店に任せる
車を買った自動車販売店やディーラーなどで、擦った傷を修理してもらうことができます。自社で板金塗装を行っている販売店もありますが、大抵の場合は下請け業者に依頼するケースがほとんどです。
筆者が中古車販売店を経営していた時もこのケースで、お客様の予算や要望に応じて、下請けの板金塗装業者に任せていました。
デメリットは、板金塗装会社と自動車販売店の両方とも利益を求めるため、お客様に請求する修理費用が高くなることです。メリットは、顏馴染みの販売店であれば、作業内容に融通が利くことや、金額の相談がしやすいことです。
全てを任せるのではなく、必ず「〇〇万円以内で修理して下さい」など、明確な修理費用を提示しておくことが大切です。
板金塗装業者に任せる
板金塗装業者に直接修理が依頼できれば、自動車販売店の仲介が省けるので、安く修理ができます。ただし、板金塗装業者と顔馴染みの人は少なく、新規で修理依頼をした場合は、逆に高い修理代が請求されるかも?
板金塗装の修理費用は、技量の対価として工賃が決められるので、板金塗装業者によって修理代に大きな差があります。板金塗装業者に直接依頼する場合は、複数の業者で見積もりを取ってから車を預けて下さい。
車を擦ったときの修理代
車を擦ったときの修理代は、傷の度合いや板金塗装業者によって、金額がバラバラです。
例えば、フロントバンパーの角を擦っただけなら、部分的に修理をするのか?それともフロントバンパー全部を塗るのか?選択次第で修理代が大きく変わります。
また、運転席のドアを擦った場合も同じで、運転席のドアだけ塗るのか?色を合わせるために、フロントフェンダーとリヤドアも塗るのか?など、作業内容によって修理代が大きく異なります。
ここでは、車を擦った傷の修理代について解説していきます。
自分で修理する場合
自分で修理する場合は、材料代だけで済みますが、修理工程や修理範囲によって変わってきます。
材料費
タッチアップ塗装と高度な技が必要なスプレー塗装に必要な材料費を紹介します。
タッチアップ塗装の場合 | スプレー塗装の場合 |
---|---|
・ビニール手袋:100円 ・耐水ペーパー:300円~1,000円 ・シリコンオフスプレー:1,000円~1,500円 ・タッチアップ塗料:500円~1,000円 ・コンパウンド:500円~1,000円 ・マイクロファイバー:100円 ・スポンジ:100円 | ・ビニール手袋:100円 ・耐水ペーパー:300円~1,000円 ・シリコンオフスプレー:1,000円~1,500円 ・プライマースプレー:1,000円~2,000円 ・クリアスプレー:1,000円~2,000円 ・ボカシスプレー:1,000円~2,000円 ・スプレー塗料:1,000円~5,000円 ・補修用パテ:500円~2,000円 ・コンパウンド:500円~1,000円 ・マイクロファイバー:100円 ・スポンジ:100円 |
材料費合計:2,600円~4,800円 | 材料費合計:6,600円~16,800円 |
「ビニール手袋」「マイクロファイバー(布)」「スポンジ」などは、100均で売っている商品で構いません。
耐水ペーパーは、ホームセンターで1枚・100円程度で売っているので、10枚買っても1,000円程度で揃えられます。タッチアップペイントは、車種によって価格が異なるので、1,000円以上する場合があります。
高度な塗装技術が必要なスプレー塗装を自分で行うには、タッチアップ塗装よりも多くの作業工程が加わります。
シリコンオフスプレーで脱脂した後、下地処理の「プライマースプレー」もしくは「プラサフスプレー」を塗らなければいけません。
下地処理をしっかりと行わなければ、ボディカラー塗装が載らなかったり、カラーの色が変わってしまうことがあります。また、スプレー塗装を施した後は、光沢を出すためのクリア塗装や、色を合わせるためのボカシ作業も重要。
傷が深い場合は、補修パテで凹凸を無くす作業も加わるので、スプレー塗装を行うには高い材料費だけではなく、塗装技術も求められます。
尚、傷の広さ(範囲)が大きければ、スプレー類も多く消費するので、上記の材料費よりも高くなることもあります。
業者に依頼する場合
車を擦った傷をプロの業者に依頼した場合は、下記の修理費用が必要です。
損傷具合 | 費用相場 |
---|---|
擦り傷(塗装) | 10,000円(5cm以下)~50,000円(60㎝以下) |
パテ処理が必要な擦り傷 | 15,000円(5cm以下)~60,000円(60㎝以下) |
板金が必要な擦り傷 | 20,000円(5cm以下)~90,000円(60㎝以下) |
- ENEOSウイング:https://lp.eneos-wing.co.jp/carrepair/gunma/4204533/
上記の修理費用は、板金塗装業者「ENEOSウイング」の公式サイトを参考にさせて頂きました。
個人的にはENEOSウイングの修理費用は良心的な金額感だと思います。
上記の修理費用よりも、2倍~3倍の修理費用を請求する業者も少なくありません。
板金塗装は、あくまでも「技術料」がメインになるので、修理にお金を掛けたくない人は、しっかりと事前見積もりを取ってから、板金塗装業者に修理依頼をして下さい。
車を擦ったら保険は適用される?
車を擦ったとき、保険を使って修理することは可能?
自分は任意保険に加入しているから、「車を擦っても保険が使える!」と思っていませんか?実は、任意保険の加入条件によっては、保険で傷が直せない場合があります。
ここでは、車を擦ったときの保険適用条件について説明していきます。
項目 | 車両保険未加入 | 車両保険(エコノミー) | 車両保険(一般) |
---|---|---|---|
自損事故による 修理の有無 | × | × | 〇 |
車両保険に加入していても、補償範囲が限定されている「エコノミー」では、擦った傷を保険で修理することはできません。擦った傷を保険で修理するには、「一般車両保険」に加入している場合のみ適用されます。
エコノミー車両保険は、自然災害(火災/爆発/盗難/台風/洪水/高潮など)は補償されますが、壁や電柱などで擦った傷(自損事故)は、車両保険が適用されません。
自損事故による愛車の傷を保険で修理したい場合は、「一般車両保険」に加入する必要があります。
保険適用時の注意点
一般車両保険に加入している人は、車を擦っても保険で修理することができます。ただし、保険で修理ができても、必ずしもメリットばかりではありません。
車を擦ったときの傷を保険で修理した場合には、保険の等級が1事故につき「3等級ダウン」します。また、翌年度から保険料が上がるとともに、3年間は「事故あり」の等級が続くという不名誉なことにもなります。
自損事故ではなく、台風などの飛来物によってついた傷を保険で修理した場合も、1事故につき「1等級ダウン」してしまいます。
その他では、車両保険加入時に「免責金額」を設定した人もいるはずです。免責金額とは、設定した金額を自己負担することで車両保険を使うことができます。
例えば、免責金額「5-10」の車両保険に加入している場合は、15万円の修理費用に対して免責額「5万円を自己負担」して、残りの10万円に保険が適用されます。
保険を使うことで、「3等級ダウン」「翌年から保険料アップ」になるため、修理代が少ない場合は保険を使うメリットがなくなる訳です。
このように、保険を使って擦った傷を直すことは可能ですが、マイナス面もあることを頭に入れておく必要があります。
車を擦ったときに絶対やるべきこと
大きなトラブルに発展させないためにも、車を擦ったときに「絶対やるべきこと」が3つほどあります。
擦った場所の確認
自分が運転しているときなら、どこで車を擦ったのか知っているはずです。
自分の私有地(自宅壁や車庫など)で擦ったなら問題ないのですが、他人が所有する建物や公共施設などで擦った場合は、所有者に連絡をして下さい。
もし、連絡を怠った場合には、器物損壊罪(他人の所有物を損壊)で訴えられる可能性があるので、大きなトラブルになる前に正直に擦った旨を伝えるようにして下さい。
警察に連絡する
擦った場所が「他人の所有物」の場合、速やかに警察へ届ける必要があります。警察に届けずに放置した場合、相手によっては法的処置に踏み切る人も居ます。
修理費用がない人は、管轄の警察に届けることで、保険の適用を受けることができるので、くれぐれも、当て逃げだけは絶対にしないで下さい。
保険会社に連絡する
警察に届けた後は、自分が加入している保険会社にも連絡することをおすすめします。
他人の所有物を破損した場合には、「現金で修理するのか?」「保険を使って修理するのか?」修理の方法を決めなければいけません。
一般車両保険に加入している人は、相手の修理だけではなく、自分の愛車も保険で修理することができます。
修理代によっては、保険を使わない方が良い場合もあるので、保険会社の担当者と相談してから決めるy修理代によっては、保険を使わない方が良い場合もあるので、保険会社の担当者と相談してから決めるようにして下さい。
まとめ
今回の記事では、車を擦った場合の気になる直し方や、修理代について徹底解説してきました。
擦った傷の度合いによっては、自分で修理することも可能ですが、車の価値を下げないためにも、プロに修理を任せるようにして下さい。
また、他人の所有物を車で擦った場合は、大きなトラブルに発展する恐れがあるので、些細な破損であっても所有者や警察に連絡することをお忘れなく!
自損事故は保険の適用範囲が狭いので、この機会に加入している任意保険の補償内容をもう一度確認することをおすすめします。