「高齢ドライバーの事故」は、毎日ニュースで取り上げられるほど、社会現象にもなっています。
高齢ドライバーによる、アクセルとブレーキの踏み間違い事故が多発していることで、最近の新車には安全運転支援システムに「急発進防止装置」が組み込まれています。
このほかにも、高速道路を逆走したり、カーブを曲がり切れずに歩道に突っ込むなど、高齢ドライバーによる事故は後を絶ちません。
今回は、免許返納は何歳までにやるべき?あなたの親は大丈夫?免許返納の目安となる年齢や、免許返納の方法まで徹底解説していきます。ぜひこの機会に免許返納について、ご家族で話う機会を設けて下さい。
免許の自主返納制度について
免許の自主返納制度とは、運転免許証が不要になった人や、運転するのに不安を感じるようになった人などが、運転免許証を自主的に返納する制度のことです。
免許の自主返納制度については、最寄りの警察署や運転免許試験場にお問い合わせ下さい。(参考:警察庁ホームページ)
免許を返納する人の平均年齢や目安について
ここでは、免許を返納する人の平均年齢や目安について調べてみたので紹介していきます。
免許を返納する人の平均年齢について
免許返納の年齢は、特に決められていません。極端なことを言えば、20代の人でも免許を返納することができます。
高齢ドライバーによる交通事故が社会問題になっていますが、免許を取得してから1度も運転したことがないペーパードライバーも非常に危険です。
ただし、高齢ドライバーは身体的な機能低下による操作ミスが多く、その点が年齢の若いペーパードライバーと異なる点です。
70歳以上の人で、「視野が狭くなる」「反射神経の低下」「判断する能力の衰え」「筋肉の衰え」などの症状を自覚した場合には、自分が高齢ドライバーであることを認識する必要があります。
令和3年の運転免許の自主返納件数は「517,040件」で、そのうち75歳以上の高齢者が278,785件(約54%)を占めています。
警視庁の運転免許統計には、細かい年齢別データの記載がないので、自主返納をした正確な平均年齢は分かりませんが、75歳以上の中でも80歳以上が占める割合は少ないことから、免許を返納する平均年齢は75歳~79歳までの間と考えることができます。
免許を返納する目安について
免許を返納する目安は、あくまでも個人で判断するしかありません。「自分は大丈夫!」と思っている高齢者が多く、自覚することが難しいのが実情です。
下記に挙げる内容に1つでも該当するようであれば、免許返納を考えるときかもしれません。
- ウィンカーの出し間違いや、アクセル操作などの踏み間違いをするようになった。
- 車庫入れに時間が掛かるようになった。
- 運転中、周囲に注意がいかなくなった。
- 道路標識を見ても瞬時に判断することができなくなった。
- カーブを上手く曲がれなくなった。
- 視野が狭くなったと感じている。
- 周囲に免許返納を勧められるようになってきた。
テレビのニュースでも話題になっていますが、「アクセルとブレーキの踏み間違い」「高速道路の逆走」「持病などによる運転中の意識混濁」など、高齢者による事故が社会問題になっています。
自分では間違ってる意識がないため、自主的に免許返納するまでには至らず、家族や友人など周囲の人が免許返納を勧めるしか方法がありません。
思うような運転操作ができなったと感じている人は、年齢に関わらず免許返納のサインだと思って、速やかに周囲に相談するようにして下さい。
免許の返納方法について
免許の返納は、管轄の運転免許センターで手続きが行えます。
手続きの方法は、各都道府県によっても多少異なりますが、ここでは長寿の県で知られている長野県で免許を返納する方法を例として紹介させて頂きます。
免許の自主返納手続きができる人
長野県で免許の自主返納手続きができる人は、本人が自主的に免許を返納したという意思があれば、誰でも運転免許の取消し(自主返納)することができます。
長野県で免許の自主返納申請ができる人は、以下の条件に当てはまる人です。
- 運転免許証住所が長野県内になっている人。
- 運転免許証が有効な人。
免許の自主返納には「全ての免許を返納する」と「一部の免許だけを返納する」、2種類の返納法があります。例えば、第一種普通自動車免許のほかに大型免許も取得している場合は、大型免許だけを自主返納することもできます。
ただし、長野県では運転免許証が失効している場合や、運転免許証が停止中の人などは、免許の返納申請ができないので注意して下さい。
免許の自主返納申請に必要な書類
長野県で免許の自主返納するには、以下の書類が必要です。
- 返納する運転免許証
- 申請用写真1枚(普通免許を返納して原付免許を更新する場合など)
- 免許証交付手数料(申請する免許の数によって手数料が異なる)
免許を自主返納する場合には、返納する運転免許証以外の書類は必要ありません。
ただし、第一種普通自動車免許を返納して、下位免許の原付などの取得申請をする場合には、新たに発行する免許証交付手数料や申請用の写真が必要になります。
申請用写真については、運転免許センターで手続きを行う場合には用意する必要がありませんが、警察署や運転免許事務取扱交番で手続きする人は、申請用の写真が1枚必要になります。
また、免許の一部だけを返納する場合には、運転免許センターならその場で交付されますが、警察署や運転免許事務取扱交番で手続きをした人は、交付までに2週間~3週間ほど時間を要します。
免許返納する本人以外が手続きする場合
なんらかの理由で本人が手続きに行けない場合は、親族に限り代理で免許の自主返納申請手続きが行えます。代理人による免許の自主返納申請には、以下の書類が必要です。
- 自主返納する人の運転免許証
- 委任状
- 本人との関係を証明する公的書類(戸籍謄本など)
- 代理人の身分証明書
長野県で本人以外が免許返納の手続きを行う場合、「原則として親族のみ」と決められています。ただし、親族がいない場合もあるので、警察署や運転免許センターにお問い合わせ下さい。
また、代理人の身分証明書としては、運転免許証や健康保険証などで構いません。親族以外が代理で申請する特殊な事例のときには、用意する公的書類も変わってくるので、事前に問い合わせをして下さい。
長野県は近くの交番で免許の返納手続きが可能!
2022年8月3日から長野県では、免許の自主返納手続きが交番でもできます。申請手続きが行えるのは、下記の交番です。
- 信濃町交番
- 信州新町交番
- 小海町交番
- 富士見町交番
- 阿智村交番
- 南木曽町交番
- 白馬村交番
交番で免許の自主返納申請手続きが行えるのは、下記の条件に当てはまる人です。
- 運転免許証の住所が長野県内にある
- 交番が住所地を管轄する警察署管内である
- 年齢が65歳以上である
- 免許が有効かつ、行政処分を受けていない人。
交番での免許自主返納手続きは、本人以外が行うことができません。そのため、代理人による申請手続きを希望する場合は、警察署または運転免許センターで行って下さい。
- 長野県警察本部交通部東北信運転免許課
- 電話:026-292-2345(平日・8時30分~17時まで)
- 安全運転相談ダイヤル:#8080(シャープハレバレ)
- 参考:長野県警察ホームページ
運転経歴証明書の交付申請
運転経歴証明書は、免許を返納した後でも公的証明書として使用できる証明書のことを言います。更新手続きの必要もなく、永久に公的証明書として利用できます。
長野県で運転経歴証明書の交付申請が行えるのは、下記の条件に当てはまる人です。
- 長野県内に住所がある人
- 免許の自主返納手続きを終えた人
- 免許失効から5年以内の人(自主返納も含む)
上記に当てはまる人は、運転経歴証明書の新規交付や再交付の申請手続きが行えます。
現在免許停止などの行政処分を受けている人や、免許が失効してから5年以上経過した人などは、運転経歴証明書の申請手続きが行えません。
運転経歴証明書は、免許返納後でも公的証明書に使用できる大切な証明書ですから、不明な点がある場合には、管轄の警察署へお問い合わせ下さい。
免許返納するメリット・デメリットについて
免許を返納するだけなら、損をしてしまうのでは?と思う人もいるかもしれません。そこで、免許を返納することで得られるメリットやデメリットについて紹介させて頂きます。
メリット
免許返納で得られるメリットは、以下の通りです。
- 事故を起こすリスクが減る。
- 免許を返納することで、様々な支援や特典が得られる。
- 車に必要な経済的な負担がなくなる。
- 不要不急の外出が減る。
- 歩くことが増えて、健康的になる。
- 運転経歴証明書を取得することで、永久に使える公的な身分証明書が手に入る。
免許返納の最大のメリットは、事故を起こすリスクが減ることや、保険料や燃料代など、車を維持するために必要な費用が全くなくなることです。
また、運転経歴証明書を取得すると、永久に使用できる身分証明書が手に入るほかに、飲食店の割引サービスや優待サービスなどの特典も受けられます。
不用意に車で出かけることもなくなり、歩くことが必然的に増えることから、健康的な生活を手に入れることもできます。
免許を返納するのは、強制ではなく自主的に行うもので、若い人でも車に乗る予定がない人や、ペーパードライバーの人も年齢に関係なく免許返納を推奨します。
デメリット
免許返納で実感するデメリットは、以下の通りです。
- 生活リズムが変わる。
- 運転が好きだった人はストレスが溜まる。
- 利便性が損なわれる。
免許を返納することで、困ることもあります。特に何十年も車のある生活をしてきたベテランドライバーにとっては、運転できなくなることで生活のリズムが大きく変わってしまいます。
例えば、車がないと生活に支障がでる地域に住んでいる人は、買い物に出掛けるだけでも大変な労力を使います。また、車を毎日運転していた人にとっては、運転ができないことで大きなストレスを感じてしまいます。
免許を返納すると、生活スタイルがガラッと変わってしまうので、一日も早く車のない生活に慣れるしかありません。
自分の親に免許返納を推奨するには?
自分の親が70歳を超える年齢の人は、そろそろ免許の返納を考えるときです。
自主的に免許返納する平均的な年齢は75歳~80歳が多いのですが、定年を迎える65歳辺りから判断力や運動能力が衰えてきます。大切な家族を守る上でも、自分の親に免許返納を推奨すべきです。
ただし、免許返納を強制するのではなく、あくまでも自分の意志で免許返納をする必要があるので、親のプライドを傷つけないように家族で話し合うことが大切です。
一緒に買い物などに行く機会を作って、下記に挙げる危ない点を指摘しながら、免許返納に導くようにして下さい。
- 車庫入れが上手くできない。
- 一定の速度で走行することができない。
- ウィンカーの出し忘れがある。
- アクセルとブレーキの踏み間違えがある。
- 道路標識の見落としがよくある。
- 車線変更がぎこちない。
- 視野が狭く、周囲の状況が見えていない。
- 運転中、前方しか見ていない。
上記のほかにも、助手席に乗っていると「危ない!」と感じることがあれば要注意です。交通事故は、被害者にも加害者にもなり得るため、親の免許返納は家族全員で取り組む必要があります。
自分の親に免許返納を推奨するのは、容易いことではありませんが、一緒に出掛ける機会を作りつつ、運転する機会を徐々に減らしていくことから始めて下さい。
まとめ
免許返納について紹介してきましたが、免許を自主返納している平均年齢は75歳~80歳くらいで、免許返納を考え出すのは65歳頃が目安の年齢です。
見た目は若くても70歳以上の人には、運転免許更新時に「高齢者講習」の受講が義務付けられています。75歳以上の人には高齢者講習に加えて「認知機能検査」を受けなければなりません。
加齢と共に身体機能が低下していくので、「若い頃と比べて上手く運転ができない」と感じた場合には、自主的に免許返納をして下さい。
また、ペーパードライバーの人も、免許を返納して公的証明書として使える運転経歴証明書の取得を推奨します。
免許返納は強制ではなく「自主返納」ですから、周囲に迷惑が掛かる前に勇気を出して、家族と相談して免許返納の決断をして下さい。